2016年3月31日木曜日

Carl Zeissが出してた「MTFの読み方」を読んでみた(1)

まずはPoint Spread Funtion(PSF; 日本語だと「点拡がり関数」、すっごいダサい直訳)が不適切になる理由を理解しなければなりません。

収差を理論的な側面から理解するという観点からは、PSFという側面を見ることは良いことのように思います。形状とその大きさを見ればレンズから得られる像の特性を評価できることは事実です。ところが以下の1つの理由から、この比較は「そこまで良いものではない」ということが言えます。
  1. PSFの形状は条件次第でとても複雑になり、単純な説明をさせないことがあるため。特にデジカメのローパスフィルターは、それそのものがやや奇抜なPSFを有するので簡単には解析できない(PSFの解析の際には、それがたとえレンズのPSFでも一度「像」にする必要があるので、デジタルカメラを使って像を計測する場合はとても複雑な条件になる・3番目の理由で詳述)
    ※近年ではローパスフィルターが入ってないものもありますが、それでも像面、コマ収差、球面収差が複雑に絡んだPSFを理解することはとても大変でしょう
  2. PSFが分かったところで、実際の撮影シーンにこのPSFがそのまま適用できるようなものは少ないため。現実には天体撮影をする場合だけPSFがそのまま適用可能で、それ以外は「数多くのPSFが重なり合ってる状態」なのでPSFをいくつも配置し、それらの和を計算する必要があります。これは現実的ではありません。
  3. レンズを通して結像した像が人間の目に知覚される、一連の画像処理の流れは、次の章で述べるような方法によって、PSFによる解析よりもより自然で単純で美しく書き表せる。
最後の3.に書いてある「次の方法」というのはModulation Transfer(変調伝達)のことですが、これは次回改めて書きます。またMTFはModulation Transfer Functionの略です。

まとめると複数の収差(ザイデルの五収差と色収差)が、それぞれ違う大きさで複合的に現れてくる点光源によって光学系の善し悪しを評価することは困難であるということです。レンズの評価をするには、かならず像であり観測可能な状態である必要があります。この場合はレンズ単体の収差に加えて、像を得るためのデバイス(フイルムなりイメージセンサー)の特性も加味しなければなりません。

センサーやフイルムが違えば、同じレンズでも別のカメラで計測すれば別の結果となってしまいます。特に同じモデルでもローパスフィルターの作用をキャンセルしているものが設定されていれば(たとえばD800とD800Eであったり、5Dsと5DsRの関係)、それぞれにおけるPSFの結果は大きく異なることが予想されます。しかしながらこれらにおけるPSFの違いはレンズの違いを表しません(違いはあくまでセンサー構造の違いです)。

もちろんこのセンサーの違い(ローパスフィルターの有無)に起因するPSFの違いは、最終的な像の差違を生み出します(D800とD800Eの違い・デジカメwatchであったり、5Dsと5DsR・デジカメwatchでどのくらい違いがあるか検証しています)。しかしこれらの違いをPSF単独で見いだすことができるかどうか、というところが問題になってきます。特に私たちユーザーはPSFを示されても、一般的な被写体でどのような像が得られるかは予想することができません。

これらの事情からも、PSFは客観的な光学系の評価方法の1つでありながらも、一般撮影における像の状態を予想するためには適していないということができます(これがMTFが使われている理由)。

2016年3月30日水曜日

D810(A)のコマンドダイアルにバグ発見?【解決済み】

D810Aを弄ってたらふと気づいたんですけど、SとPモードでバグがあるようです。
バグじゃなくて仕様でした。でも改善の余地はあります。


具体的には(SモードとPモードで)接点付きレンズを装着している状態と、レンズ非装着(または接点なしレンズを装着してる状態)でメインとサブコマンドダイアルが入れ替わります。問題はレンズによって(接点の有無で)機能が入れ替わってしまうことです。しかもこの症状はMとAでは見られないので、バグと判断して間違いなさそうです。モードが変わってしまうのが原因です。SモードとPモードでレンズ非装着だと自動的にAモードになります。D810の取説115ページ(PDFバージョンでは139ページ)に記載があります。

D810だと同じ問題ないのかな?D810でも同じ問題が出ます。

【追記・ニコンへ問い合わせを送信しました】
いつもお世話になっております。

D810Aを使っているのですが、SモードとPモードにおいてのみ、接点付きのレンズを装着するとメインとサブコマンドダイアルの機能が反転してしまいます。たとえばSモードの場合、レンズ装着している状態でメイン:シャッター速度 サブ:ISO感度となっている場合は、レンズを外す(または接点なしのレンズを装着する)とメイン:ISO感度 サブ:シャッター速度となります。AモードとMモードでは反転しないのでバグかと思われますが、検証していただけますでしょうか。

撮影に今のところ支障は無いので急ぎませんが、バグでファームアップデートによって修正可能なものでしたら対応いただきたく存じます。

お忙しいところかと存じますが、よろしくお願いします。

【追記・発生条件の特定がほぼできました】
D810またはD810Aのカスタムメニューd8を「感度表示と簡易設定をする」に設定して、PまたはSにおいて接点付きのレンズが装着されてるか、それ以外の状態かによりメインとサブのコマンドダイアルが入れ替わります。PまたはSとAではISO感度のダイアルが入れ替わるので「逆転する」ように感じられるだけです(メインとサブを入れ替えるようにf9で設定している場合はSの時のみAに対してISO感度のダイアルが入れ替わる)。

【追記・ニコンから返事があり、問題が特定できました】
カスタムd8で「ISO感度表示と簡易設定をする」に設定すると空いてる軸がISO感度設定に割り当てられますが、これがAとSでは逆になります(絞り値とシャッター速度の設定をMモードと揃えてるため)。これでレンズ脱着するとAとSが切り替わるのでISO感度設定の割り当てが逆転します。このためAとSは常にISO感度設定は接点付きレンズの有無で逆転します。
それとは別にプログラムシフトとISO簡易設定は、なぜかf9のメイン・サブ入れ替えを行っても反転しません(バグ?w)ので、メインとサブを入れ替えるようにf9で設定している場合はPでは入れ替わらず、Sでのみ入れ替わります。

2016年3月29日火曜日

D5の低感度ダイナミックレンジが狭い理由の可能性

一部で噂になっているD5の低感度でのDRの狭さですが、もしかしたら基準感度がISO 1600になっていて、それ以下は「拡張感度」みたいなものなのかもしれません。

http://www.dpreview.com/news/9402203921/nikon-d5-shows-drop-in-dynamic-range

センサーの持つダイナミックレンジを最大限に生かせるのが「基本感度」なので、ISOいくつでしたっけ327万とかいうもはやイミフな領域にまで突入してるD5では低感度側でのDRをそこまで重視していない可能性は十分に考えられます。

実際にこれまでの機種でもISO 50でのDRはISO 100のそれに比べて狭いということが往々にしてあり、またこのときは白飛びが起きやすいということが同時に報告されています。今回のD5がこれと似たような白飛びのしやすさを示すのか気になるところ。TwitterのフォローにD5を発売日getした人がいるので聞いてみるか…

2016年3月28日月曜日

Carl Zeissが出してた「MTFの読み方」を読んでみた(序・その2)

(前回の続き)

・シグマ
https://www.sigma-photo.co.jp/new/new_topic.php?id=611
“MTF(Modulation Transfer Function)は、レンズ性能を評価する尺度のひとつで、被写体の持つコントラストを像面上でどれだけ忠実に再現できるかを空間周波数特性として表したものです。
図の横軸に像高(画面中心からの距離mm)をとり、縦軸にコントラスト値(最高値を1)を示したものです。
MTFには光の波動的性質を考慮した「波動光学的MTF」と考慮しない「幾何光学的MTF」があります。
光の波動的性質は光の回折現象として現れますが、回折現象はF値が大きくなる(絞り込む)ほど顕著で、
像の解像度を低下させる原因になっています。また、回折現象は開放状態でも発生しており、弊社では、当初から実際の撮影データに近い「波動光学的MTF」を掲載しております。
一方、光の波動的性質を考慮しないMTFは「幾何光学的MTF」と呼ばれ、簡易的に計算できるメリットがあります。しかし、回折現象を考慮しないためF値が大きくなるほど実写性能よりも値が高くなる傾向を持っています。”

これは波動光学的MTFと幾何光学的MTFの違いについて、です。このほかに

“このMTF曲線は、絞り開放時の空間周波数10本/mm(1ミリの中に白黒の組が10組)に対応する曲線を赤線で、空間周波数30本/mm(1ミリの中に 白黒の組が30組)に対応する曲線を緑線で示しています。10本/mm の曲線が高いほど(1に近いほど)コントラストがよくヌケのよいレンズとなり、30本/mmの曲線が高いほど(1に近いほど)高解像度でシャープなレンズ といえます。また、S方向(サジタル方向:放射方向)とM方向(メリジオナル方向:同心円方向)の特性が揃っているほど自然な描写が得られボケ味のよいレ ンズとなります”

という記載がありますが、いずれたいした話はしていません。

・トキナー
http://www.kenko-tokina.co.jp/faq/0238.html
“被写体の持つコントラストを像面上でどのくらい再現できるかを表すものです。”

手抜きしすぎ

・タムロン
http://www.tamron.jp/product/lenses/a012.html (「MTFの見方」をクリックすると表示)
“被写体の持つコントラストを、レンズを通してどの程度忠実に再現できるかを表したのがMTF(Modulation Transfer Function)曲線図です。
MTF曲線図の10本/mm(低周波)のカーブが1に近いほどコントラストの再現性がよく、ヌケの良いレンズとなり、30本/mm(高周波)のカーブが1に近いほど解像性のよいシャープなレンズとなります。
また、画面の放射方向(サジタル・実線)と円周方向(メリジオナル・破線)によっても、カーブが異なります。
シャープで抜けがよく、画面全体で均質な性能を得るには、それぞれのカーブのバランスが取れていることが大切です。
なお、レンズ性能は、ボケ味や各種収差の状況など、MTF曲線図だけでは表せない側面もあります。MTF曲線図は、レンズ性能を表す尺度のひとつとしてご利用いただけます。 ”

相変わらず生ぬるい表記で、イマイチ当を得ません。

・コシナ
※Carl ZeissとZEISS銘のレンズのみチャートを公表し、読み方は記載なし

・Carl Zeiss
詳細データを公表
How to Read MTF Curves - Zeiss
https://www.zeiss.com/content/dam/Photography/new/pdf/en/cln_archiv/cln30_en_web_special_mtf_01.pdf

そこで次回以降、唯一のまともな(?)記載がされてるCarl ZeissのPDFファイルを参考に、どうやってMTFチャートは活用されうるのか検討していきます。

Carl Zeissが出してた「MTFの読み方」を読んでみた(序・その1)

MTFチャートって各メーカーが公表していますが、読み方はよく分かりません。もちろんおおざっぱには書いてありますが、詳細が不足していてまったく役に立ちません。

・キヤノン
http://cweb.canon.jp/ef/knowledge/index.html
“10本/mmと30本/mmのMTF特性が示されています。MTF特性図上の10本/mmのカーブが1に近いほどコントラスト特性がよく、ヌケの良いレン ズとなり、30本/mmのカーブが1に近いほど高解像力を備えたシャープなレンズとなります。シャープで抜けのよい高性能レンズであるためには、両者でバ ランスが取れていることが大切ですが、一般的に10本/mmのMTF特性が0.8以上あれば優秀なレンズ、0.6以上あれば満足できる画質が得られると言われています。”

メーカーのくせに「○○であれば満足できる画質が得られると言われています。」なんてものすごい歯切れが悪い言い回しです。しかもこの表現はデジタル一眼レフが登場する前から脈々と受け継がれたもので、本当に信じて良いのだろうかと疑いを持ってしまいます。 サジタルとメリジオナルの違いも一切触れられてないし、これを見てもさっぱりわかりません。

キヤノンの公表しているMTFチャートで唯一評価できる点は、絞り開放だけでなく絞った状態のチャートも掲載していることです。この比較があれば、レンズの特性が絞りを絞り込むことでどの程度変化するかが分かります。特に大口径単焦点レンズで「開放はちょっとフワッと、絞り込むとスパッと写す」ようなレンズでは、この比較がないと「開放はフワッと写る、じゃあ絞ったらどうなるんだ」ってなってしまいます。

・ニコン
http://www.nikon-image.com/products/lens/mtf.html
“軸外像高では非点収差の影響でS方向(サジタル方向:放射方向)とM方向(メリジオナル方向:同心円方向)で、コントラストの変化が異なってきます。一般 に、10本/mm の曲線が1に近いほどコントラストがよくヌケの良いレンズになり、30本/mmの数値が高いほど高解像なレンズといえます。”

サジタルとメリジオナルの違いに言及しているのは良いのですが、その原因は常に非点収差とは限りません。たとえば倍率色収差が出ている場合は、放射方向は影響を受けない一方で同心円方向は影響を受けます(色にじみが白黒チャートの濃淡に影響を与える)。

ニコンの問題点は絞り開放しか掲載していないので、「中庸な口径で絞り開放からシャープなレンズ」のほうが「欲張った大口径で、絞り開放では少し甘いが絞ると収差が減るレンズ」よりも良く見えてしまうことです。

・ペンタックス
※多くのレンズでMTFチャートは載ってない

・ソニー
http://www.sony.jp/ichigan/products/SAL50F18/feature_1.html
“MTFはレンズのコントラスト再現性を示すレンズ性能評価方法のひとつ。撮像面上で画像がどれだけ被写体を忠実に再現しているかを、周波数特性で表現しま す。MTF特性図は、横軸が画面中心からの距離(mm)、縦軸がコントラストとなっており、また、MTF特性は代表的な空間周波数(10本/mm、30本 /mm)について、方向(放射線状:R、同心円状:T)、絞り値(開放、F8)の条件により表されています。”

キヤノン並の説明です。計測もキヤノンと同等で、絞り開放と絞った状態の両方を載せてるのはいいのですが、肝心の説明がスカスカです。

・オリンパス(フォーサーズ陣営)
http://www.four-thirds.org/jp/special/lens_knowledge.html
“Modulation Transfer Function(MTF)曲線は、レンズ性能を評価する指標のひとつで、被写体の持つコントラストをどの程度忠実に再現できるかを周波数特性によって表したものです。
MTF曲線は、縦軸にコントラスト再現率(%)、横軸に画面中心からの距離(mm)を示し、放射線方向のS(Sagittal)と同心円方向のM(Meridional)の2曲線で評価します。
下記のMTF曲線図は、1mmに20本の正弦波と、60本の正弦波がレンズを介して、そのコントラストをどこまで再現できるのかを表しています。一般に、 低周波の曲線が100%に近いほどコントラストの良いレンズで、高周波の数値が高いほど高解像度なレンズと言えます。
評価する周波数の設定は、各社の設計ノウハウによって異なります。”

正弦波の数が他の2倍になっているのは、センサーサイズが一片あたり半分なので、同じサイズに出力される場合だと等価の空間周波数が2倍になるためです。この説明がないのはイマイチで、他の説明はキヤノン並です。

・富士フイルム
※MTFチャートが載ってるのに、解説がない
(次回に続く)

2016年3月14日月曜日

Modulation Transfer Function

Modulation Transfer Function (MTF)の考え方は電気系の伝達関数がベースになっています。電気系では横軸が時間で縦軸が振幅です。光学系では横軸が位置で縦軸が振幅です。

電気系で信号がLowからHighに立ち上がる(またはその逆の)過渡応答、いわゆるスルーレートが定義されているように光学系でもスルーレートを考えてみます。ただし光学系では横軸が時間ではなく位置になるので、スルーレートも時間ではなく位置に関するものになります。


電気信号がHighからLowに変化する状態は、明るさが白から黒に変化する状態に対応します。このとき理想の波形に対して実際の波形は、しばしば横軸方向に大きな幅を持ち、理想的には直角に落ち込むところで実際にはもっと緩い角度で落ちていきます。。電気信号で言えば立ち下がりがとても遅い状態です。光学的には白から黒に向かうとき、キレが悪くフレアを伴うような状態です。これは何を示しているかというと、黒い背景の中に存在する点光源が、理想的には点になるところで実際にはより大きな面積になってしまうことを示しています。この様子は夜景や星景の撮影をした経験があれば感覚的に分かるかと思います。

逆は少し紛らわしいです。電気信号でLowからHighに遷移する時の信号の傾きは、理想値(直角)よりも小さくなり、これは光学系でも同じです。ただし電気系だと応答が遅れるところ、光学系だと応答が進むと考えられます。電気系ではLow→Highに切り替えるのに時間がかかる一方で、光学系では明るいものが暗いものに影響を及ぼすため、基準になる位置が違っています。電気系では切り替え始める時刻が基準になりますが、光学系では明るい位置が基準でそっからさかのぼって暗い側に影響を及ぼします。ちょうど先に述べた明るい部分から暗い部分に遷移する状況を左右反転して考えている状況です。繰り返しですが、電気系では横軸が時間ですが光学系では横軸が位置なので、電気系で置き換えるとあたかも「時間をさかのぼっている」ように見えることに注意してください。電気系は時間に対する応答(横軸の増加に対して縦軸が影響を受ける)一方で光学系は明るさに対する位置への影響(縦軸の変化に対して横軸が影響を受ける)ということです。

線の太さ

解像感と解像度はたぶん違うもので、レンズはどうやら解像感重視と解像度重視の設計が可能であろうということが考察されました。レンズの評価で線が太い or 線が細いという表現がありますが、これはおそらく解像感と解像度に関係ありそうです。

線が太いレンズは、解像感重視の設計だと考えられます。これが正しければ「写っている線がくっきりはっきりしているが、細かい部分は潰れてしまって写らない」です。このため画面を構成できる線は太いものばかりで、しかもその線は背景に対する明暗差がしっかり出てきます。くっきりはっきり、太い線ばかりで構成されているので「線が太い」という感想を持ちます。

一方で線が細いレンズは、解像度重視の設計だと考えられます。言い換えると低周波数の応答はそこまで良くないけど、高周波数の成分までしっかり描写するレンズです。このため線が太いレンズでくっきりはっきりしていた太い線はコントラストが低下しているので滲んだようになります。しかしそれよりもさらに細い線も、コントラストは低下しているものの潰れることなく写っているような状況になると考えられます。実写では、ぱっと見「あれ、甘くない?」と思うのですがよくよく観察すると「ああ、ここまでちゃんと写ってるのか」というタイプです。思ったよりも細い線がちゃんと写ってるので「線が細い」という感想につながるのだろうと考えられます。

どちらがいいのかは状況次第ですが、一つだけ明確なのは低周波数での応答が優れ、高周波でも応答が優れているレンズに勝るものはないということです。ただし現実では費用や光学系の大きさ重さの制約、また一般的にレンズは絞れば写りが良くなるので開放から広域に亘って素晴らしい応答を示すレンズは少ないものと思われます。

解像感

前回に定義した通り、解像力とは閾値のコントラストを割り込む空間周波数で、この閾値は観測者や条件によって変化します。言うまでもなく、この考え方は閾値が10%でなくても、たとえば5%でも20%でも成り立ちます。

ただし、個々のレンズによって空間周波数を連続的に変化させたときのコントラスト応答カーブが異なるので次のようなことが起こりえます。閾値が5%としたとき、つまりコントラスト5%を割り込む空間周波数はレンズAのほう がレンズBよりも高い。一方で閾値が20%としたとき、つまりコントラスト20%を割り込む空間周波数はレンズAよりもレンズBのほうが高いという状況です。こうなると観測者が閾値に5%を採用すればレンズAのほうが「高解像度」で、閾値が20%だとレンズBのほうが「高解像度」となります。

ここで解像感を定義します。解像感は「ある空間周波数以下におけるコントラストの強さ」とします。解像度のときと比べて順序が逆で、まず基準の空間周波数が存在して、そのときのコントラストを見ていたことに注意してください。どのくらいの空間周波数と基準とするかは、これまた観測者や観測条件(拡大率)によって大きく異なるものとします。もしよい良い定義が考えられうる場合はコメントしてください。

先の例で出てきたレンズがどのような 描写になるか考えてみます。話を単純にするために、

レンズAは10 lpmmで70%, 20 lpmmで40%, 30 lpmmで30%, 50 lpmmで20%, 70 lpmmで15%, 100 lpmmで10%, 200 lpmmで8%, 300 lpmmで7%, 500 lpmmで5%
レンズBは10 lpmmで95%, 20 lpmmで80%, 30 lpmmで70%, 50 lpmmで50%, 70 lpmmで20%, 100 lpmmで10%, 200 lpmmで5%, 300 lpmm以降で1%未満

という応答をするものとします。言い換えると100 lpmm未満ではレンズBのほうが高コントラストで、100 lpmm以上ではレンズAのほうが高コントラストという条件です。

また観測者は50 lpmm以下のコントラストでレンズの解像感を判断し、解像度の判定はコントラスト5%に達する空間周波数するものとします。このとき解像感ではレンズBのほうが優れるが、解像度はレンズAのほうが優れるということになります。これがいわゆるコントラスト(解像感)重視と解像度重視の違いになっていると考えています。間違っている可能性はありますが、一つの考え方としては興味深いものに思います。

解像度

前回は解像とは2点間の明暗差(コントラスト)を知覚できている状態と定義しました。繰り返しますが、これは観測者に依存します。このためレンズの絶対的な解像力について言及しているものは、解像力の定義がされてなければ参考になりません。誰がどのように観測して、コントラスト何パーセントまでを「解像」と定義するかによって、同じレンズでも解像力(lpmm)は変わってしまいます。

ただし同じ観測者が二つのレンズを同一条件下で「相対的にAよりBのほうが解像力がある」という表現をしていれば参考にできる可能性があります。それでも必ずではありません。入力信号である白黒正弦波チャートの明暗差が実際の条件に即しており、その明暗差が極端に高くなく、また低くないことが第一の条件です。次に観測する際の閾値がこれまた高すぎず、低すぎずに、実際に写真を鑑賞するときに生じる閾値に近い条件であることです。

閾値は主観的なので注意が必要ですが、ここで仮に閾値がコントラストが10%になる点だったとします。そして理想レンズに対して白黒正弦波を、空間周波数を連続的に変化させて入力(撮影)したときにどのような像が得られるか考えてみます。理想的なレンズであっても回折が存在するので、空間周波数が極端に高くなった(→白黒のパターンが密になってる)状態では白黒正弦波が綺麗に出てきません。つまり、空間周波数を低い側から高い側に連続的に変化させたとき、ある周波数で「白黒のコントラストが10%になる箇所」が存在します。

実際のレンズは収差があるので、より低い空間周波数でコントラスト10%を割り込みます。そしてレンズによってその周波数は異なり、解像力はレンズによって異なると言うことになります。もちろん収差状況が異なる中心と周辺では、同じレンズでも解像力(←正弦波チャートのコントラストが10%を割り込む空間周波数)は異なります。

コントラスト

レンズでしばし気になるのが「解像度」
でも解像度ってそもそも何?というのがこの記事を書くことにした動機です。

個人的な考えでは解像度はコントラストによって定義されます。両者は切っても切れない関係なのですが、やや紛らわしい点は画像処理ソフト(GIMPとか)で「コントラスト調整」という項目で、これは「画像全体での最も明るい部分と最も暗い部分の差を調整する」ものですが話がとても面倒になってしまう(*)ので、今回は「なかったもの」として無視します。

話を解像度に直結するコントラストに戻します。被写体側に存在する明暗が像側でも再現されていれば「解像している」と判断します。まずは空間周波数やレンズを問わずに、一般的な状況を考えます。明るさが正弦波的に変化する白黒の組を写した時、この正弦波がちゃんと(明瞭に)写っていれば「解像する」と言い、潰れて完全なグレーになってしまったら「解像しない」と言うものとします。

このとき、これら2つの間どこかに「写ってはいるんだけどかなり目を凝らさないと分からない、ぱっと見たところではぼやけてるように感じられる」という状態が定義できます。今回はこれを「その白黒パターンを解像できる限界」と定義します。なおこの定義を使う場合は「ぱっと見たところではぼやけているように“感じられる”」なので、観測者に依存することには留意する必要があります。人によって「ぼやけるように感じるコントラストの最大値」、言い換えてわかりやすくすると「くっきり写ってると感じるコントラストの最小値」は人によります。この値を閾値とします。観測者が同一で、観測条件(照明)等が揃っていれば、この閾値は変わらないものとします。

これで空間周波数やレンズの種類を問わずに「解像する」と「解像しない」の境目、閾値が定義できました。解像するということは、2点間の明暗差(コントラスト)が知覚できることを指します。


(*)GIMP等におけるコントラスト調整は、条件によって解像に影響を及ぼす場合と及ぼさない場合があります。このため現時点で扱ってしまうと無意味に話が込み入ります。一通り話が済んだ後で機会があったら触れるようにしますが、今の時点ではコントラスト調整のことは別物として扱ってください。

2016年3月7日月曜日

欲しいものリスト

普段は買いたいもの(新品・中古を問わず)があっても、それが売れてしまうことを防ぐために書かないのですが、今回は例外。


・ラズパイとそのモニタ
→これは遊び用っていうのもあるけど、それより日本にいる間に車の中で常にパソコンを使っていられるようにするために使いたい。ラップトップもあるんだけど、何となく使ってみたい。うまくすればタブレットみたいにできるはず。 ラズパイ2BとIGZOのフルHD液晶にしたい。

・Really Right Stuffのレンズサポーター
→望遠レンズを装着するときに安定性を増すもの、というのが本来の使い方ですが今回はそれに加えてマウントに負荷をかけないための部品として使いたい。
すっごいおおざっぱに言うとこれのさらに拡張版を検討しています。まず
http://www.reallyrightstuff.com/CB-10-Package-CB-10-and-Mini-Clamps
http://www.reallyrightstuff.com/MPR-End-Rail-Package
この2点を連結して先の「Kennan Ward Super-Tele Package」の小さい版を構成します。これでD810AにM* 300を装着した状態には対応できるはず(ただし三脚座の高さとボディのクランプの高さによっては不適合だけど、これはなんとかする)。長さはそんなにいらないのでCB-10で問題なし。

そして次に、D810AにFA 645 200を装着したときのために、Y字サポートを追加
http://www.reallyrightstuff.com/CB-YS-Long-Lens-Support
これでCB-10にボディ、Y字サポートはレンズへ。Y字サポートはクランプで容易に脱着できるから、組み合わせに応じてY字サポートとエンドレールパッケージを切り替えればOK

最終的にはクランプ
http://www.reallyrightstuff.com/B2-mAS-38mm-Screw-knob-clamp-with-1-4-20-screw
これを追加して、両側にボディクランプとY字サポートを自由自在に脱着できるようにするのが目標

レンズの構成に迷う

なんとも贅沢な話なのですけども、どうしても荷物の制限がある(どんなに頑張っても機内に持ち込めるのは20 kgまで・もちろんリュックやパソコン込み)ので最適化しておかないといけません。

(1) D810Aに組み合わせる大口径単焦点
Distagon 21, Distagon 35, Apo Sonnar 135

これは迷いなく決められます。

(2) 67でも645DでもD810Aでも使える望遠
67 M* 300 ED (IF)

これも迷いはありません。問題はこっから

2016年3月5日土曜日

ディーゼルのNOx問題

前にも一度とりあげた「VWの不正問題は、たしかにVWは問題だけれど他のメーカーに問題がないというわけではない」件について、その後の進展があったからまとめておきます。

国交省からの発表は以下のPDFを見てください。
排出ガス路上走行試験等結果取りまとめ - 国土交通省・環境省
排出ガス路上走行試験等調査概要及び検証方法 - 国土交通省・環境省

1, VW不正が発覚(2015年9月)
テスト条件を検知して排ガス浄化装置を全力で稼働させた上でテストをパスし、実際の走行ではこの浄化装置を無効化していたというのが問題の発端でした。
ここでも9月にまとめてます
http://brwafe2.blogspot.ca/2015/09/blog-post_25.html

2, 他のメーカーも環境基準値を超えるNOx排出の疑いはかかっていた
VWはテスト条件だけを検知して、このときに普段とまったく違う動作をしていたため明確に問題になったのですが、他のメーカーも環境基準値より多くの有害物質を出している可能性はありました。もちろんデフィートツール搭載してないのですが、かといって複数の運転条件で必ずいつも環境基準値を下回れるとは限らない(→上回る可能性もある・というかまず上回っている)という状況でした。
NOxを出すのはVWのディーゼルだけか? - 自動車評論家 国沢光宏