2020年11月17日火曜日

Carl Zeiss Distagon T* 2/25 ZF.2のレビュー

とあるところでCarl Zeiss Distagon T* 2/25 ZF.2を買ってみたので、いつも通り無限遠付近での特性を見てみました。この個体はそこまで状態が良くなさそうです。具体的には左端と右半分の中間が良いものの、そのトレードオフなのか左半分の中間と右端が特に悪い描写です。左端から並・悪・優・良・並といったところです。この左右差を端的に示している例が、画面中央でわずかにピントが奥の状態で1段だけ絞った、このF2.8での描写です。

_DSC9182

仔細に見ていきましょう。縦方向にはピントが僅かに動かしていて、左端がF2.0の開放で1段ずつ絞っています(右端がF16の例)。まずは中央部の描写ですが、球面収差の残存量のためか開放でピントがほんの少し手前くらいで絞った時にちょうど良さそうです。

D2025_CenterDefocusFstop

続いて画面右半分の中間あたりですが、ここはかなりまとまった描写に見えます。

D2025_MidRightDefocusFstop

さらに右へ進んでいって右端ですが、末端の枝の描写がとても残念な感じに。とはいえ右端なのでそこまで大きな期待はしていません。

D2025_FarRightDefocusFstop

今度は画面の左半分を見てみましょう。中間部では非点収差なのか、特にF2.8からF4.0の間で悲惨な描写になっています。

D2025_MidLeftDefocusFstop

左端ではそんなに悪くありません。

D2025_FarLeftDefocusFstop

ここからは他のレンズと比較してみます。いずれも同じ日に撮影し、WBは固定しています。左端がこのレンズで上からF2.0, F2.8, ..., F16です。真ん中の列はDistagon 2,8/25で、右の列がDistagon 2,8/21です。ピント位置はそれぞれのレンズでF5.6前後で画面全体平均が最良になるように選んでいます。

まずは画面の中央ですが、開放ではDistagon 2/25は気持ち前ピンに、Distagon 2,8/25では気持ち後ピンに見える描写です。またカラーバランスの違いが目に付き、特にこのDistagon 2/25だけ黄色がかっていません。とはいえF4.0以降はほぼ差が見られません。

AveFocusBestComparison_center

続いて画面の右半分の中間あたりです。右の列のDistagon 2,8/21が圧倒的で、25 mm同士は良い勝負ですが、F4.0まではわずかにDistagon 2/25のほうが良くて、F5.6ではほぼ差がありません。ただし倍率色収差はDistagon 2,8/25が大きく目立っています。

AveFocusBestComparison_midRight

さらに右端です。ここでも右の列のDistagon 2,8/21が圧倒的な描写を見せつけていていますが激しい緑かぶりが顕著です。Distagon 2,8/25はF5.6までコントラスト不足、Distagon 2/25はコントラストが高いものの解像していません。特にF5.6以降ではDistagon 2,8/25のほうが良好にすら見えます。

AveFocusBestComparison_farRight

今度は左半分の中間あたりです。Distagon 2,8/21は相変わらず。Distagon 2/25とDistagon 2,8/25の関係もこれまでと似たようなものですが、F5.6で並んでF8.0ではDistagon 2/25が優勢です。右側の時と印象が変わるのは見ている空間周波数が少し上がっているから?

AveFocusBestComparison_midLeft

最後に左端です。ここに来て写ってる物体の特性(コントラスト比や空間周波数)によるものなのか個体差の組み合わせによるものか、いずれDistagon 2,8/21の圧倒的な優位性は際立ちませんが、それでも決して負けることはありません。

25 mm同士ではF5.6ではDistagon 2,8/25のほうが僅かに良好、F8.0だと倍率色収差の少なさでDistagon 2/25のほうが良好に見えます。F11とF16では回折のせいか描写がやや甘く感じられ、差は倍率色収差の量を除いて皆無になります。

AveFocusBestComparison_farLeft

デフォーカスした結果を見てみると非点収差の出方が左右で異なるようなので、もしかしたらサジタル面とメリジオナル面のいずれかが目に見えて倒れているのではないかと感じました。このことからDistagon 2/25は理想的な調整がされた状態ではなさそうと推論していますが、実際にはカメラを180度回転させて比較してみないと確定的なことは言えません。そもそも左右での差は程度問題でどのレンズにも多少なりは存在するものと思われます。

近距離ではDistagon 2,8/25に対して大きなアドバンテージを見せるDistagon 2/25ですが、個体差を勘案しても(個体差がなかった場合にどんな描写になるか考慮しても)無限遠付近ではDistagon 2,8/25に比べて大きく勝る描写とは言えないようです。もちろんF8.0くらいまで絞った場合は全体的に一皮むけたような描写になりますが、あくまで横に並べて比べてみた場合に初めて気づく程度のものでしょう。いずれDistagon 2/25を調整をしてもらった上でどのような描写になるか改めて見てみる必要がありそうです。

おまけ

これまでのDistagon 2,8/25のレビューなど

https://brwafe2.blogspot.com/2020/11/distagon-25-zf-zk-review-summary.html

https://brwafe2.blogspot.com/2018/10/carl-zeiss-distagon-t-25mm-f28-zf2.html

https://brwafe2.blogspot.com/2018/10/carl-zeiss-distagon-t-25mm-f28-zf22.html

https://brwafe2.blogspot.com/2018/11/carl-zeiss-distagon-t-25mm-f28-zf2review3.html

これまでのDistagon 2,8/21のレビューなど

https://brwafe2.blogspot.com/2013/01/carl-zeiss-distagon-t-2821-zf-d800.html

https://brwafe2.blogspot.com/2013/09/defects-of-distagon-28-21.html

https://brwafe2.blogspot.com/2018/11/carl-zeiss-distagon-t-2821-zf.html

https://brwafe2.blogspot.com/2020/11/distagon-21-variation.html

※当ブログではDistagon 2,8/21について全体的に悪い部分を強調していますが、今回の記事で比較して分かるとおり“伝説の超広角レンズの設計を一新”しただけあって、実際に使っていてはかなり良いレンズだと感じています。

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