2020年11月6日金曜日

Distagon 2,8/21の個体差

巷では超高性能と言われているDistagon 2,8/21ですが、Lensrentalsにおける評価ではコシナのCarl Zeissのシリーズの中だと「ばらつきが大きめ」なほうです。

https://www.lensrentals.com/blog/2015/07/variation-measurements-for-wide-angle-lenses/

この評価の指標は各レンズを複数個体(n=5から10程度)で計測したMTFのうち、30 lpmmのサジタル(放射方向)とタンジェンタル(同心円方向・メリジオナルとも)でより悪い方を用います。ただし性能の悪いレンズは分散が大きくなれないという原理的な問題から、分散の絶対値ではなく平均値による補正(正規化?)を行い、さらに高性能なレンズで指標が指数関数的に上昇してしまうので感覚的に合致するよう平方根(なんで対数じゃないんだろう?)をとっているようです。これは以下のgeek onとgeek offの間に詳述されています。

https://wordpress.lensrentals.com/blog/2015/06/measuring-lens-variance/

出てきた数値を感覚的に見てみると、どうやら5以下だとイマイチ、6以上だとなかなか良いようです。

指標は5.2なのでイマイチは免れていますが、それでも値は低めです。ここで同じLensrentalsのブログに面白い記事を見つけました。

https://www.lensrentals.com/blog/2015/08/mtf-and-variation-an-example/

Distagon 2,8/21の特定の個体がやや甘い写りということに気づいたので実際に計測して、前玉(前群?)を調整して計測しなおしたところ大きく値が改善したという話です。このレンズが光軸からズレる現象についてはここに書いてあります。

https://wordpress.lensrentals.com/blog/2012/05/testing-for-a-decentered-lens-an-old-technique-gets-a-makeover/

記事の後半に書いてあるデフォーカス像の様子を観察する手法は万能とは言えませんが、簡易的な確認の方法として覚えておいて損はなさそうです。

蛇足です。35 mmのレンズの詳細があります。どうしても指標を出す際に「画面全体におけるMTF計測値を平均する」という作業が入るため、画面中心でばらつきが小さくて周辺で差が大きくなるレンズと、画面全体で満遍なく小さくばらつくレンズの違いが分かりません。

https://www.lensrentals.com/blog/2015/07/variance-measurement-for-35mm-slr-lenses/

また50 mmの詳細はここにあります。これら詳細のグラフでは30 lpmmを用いた評価の数字だけでなく、画面中心から周辺への分布や、他の空間周波数におけるばらつきも見ることができるので、グラフを読み取ることができる人には元の記事を見た方が分かりやすいと思います。

https://wordpress.lensrentals.com/blog/2015/07/variation-measurement-for-50mm-slr-lenses/

もっともMTFそのものも指標の一つでしかなく、ばらつきの評価を行う品質管理の側面では有用かもしれませんが、画質の推定という意味ではMTFの数値そのものに強く囚われる必要はないと思います。

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