2018年11月7日水曜日

Carl Zeiss Distagon T* 2,8/25 ZF.2 レビュー(3)

前々回そして前回とDistagon 2,8/25の描写を、遠景で見てみました。今回は前々回に少し触れた中距離~近景でどのような描写になるかです。まずは中距離での撮影です。はっきり覚えていませんが、だいたい1~2 mくらいだったと思います。

_DSC4941

絞り開放のF2.8でも中央部はまあ普通に写りますが、まず画面の左右中央を、上から画面中央を経て下まで見てみましょう。俯瞰している図ですのでいくら25 mmとはいえF2.8では被写界深度は画面全体をカバーするのに十分なものではありません。このため画面の上も下もボケています。次に注目は画面の上辺で、この左(左上)から右(右上)まで見れば分かる通り、なんと角ではピントが合っているかのような描写になっています。多くのレンズは画面の周辺部ほどピントが「手前に」来るように見えるのですが、このレンズの場合は真逆で「奥に」行ってしまうように見えます。

また画面の中央から水平方向に左右へ向かって見ていくと、撮影距離が同じなのに流れていくような様子が見て取れますが、これこそがチャート分析で大きくスコアを落とす原因と思われます。無限遠しか使わないか、寄るときは画面の中心しか重視しないような撮影では良好な描写を示すことが期待されますが、1 mくらいから手前で画面全体でのまとまりを期待する場合はこのレンズよりDistagon 2/25のほうが良い描写になると思われます。

ところでこのレンズの最短撮影距離は17 cmでワーキングディスタンスはたったの6 cmと、かなり寄れるレンズです。最大像倍率は1:2.3なので0.435倍です。
Focusing range 0,17 m (6.69") – ∞
Free working distance 0,06 m (2.36") – ∞
Image ratio at minimum object distance 1 : 2.3
この最短撮影距離0.17 mというのはコンタレックスのDistagon 2,8/25のスペックと同一なので、狙って設定した値かもしれません。
カタログスペックに限らず、外観においてもClassicやZMにおけるクロームメッキ仕様のフィルタースレッドや、ZMのピントリングにおける指かかりなど、コンタレックスのレンズを思い浮かべる要素があります。
外観デザインは1960年代に西ドイツを代表する超高級一眼レフであったツァイス・イコンのコンタレックス用交換レンズにかなり似たイメージである。特に先端部の銀色のクロームメッキされたバヨネット式シェード(フードのことをコシナ・ツァイス製品はシェードと呼ぶ)取り付け部は、まさにコンタレックス用レンズのデザイン上の特徴であった部分で、これはZMマウントシリーズのレンズ群と共通だ。 
外観デザインは一見するとオーソドックスなものであるが、ピントリングのデザインは、'60年代に西ドイツを代表する超高級一眼レフであったツァイス・イコンのコンタレックスの交換レンズによく似たものになっている。鏡胴下側に一カ所出っ張りがあるが、この形状もコンタレックスのものである。
ところで先の商品紹介のページでDistagonタイプ(=逆望遠型)の一般的な説明として
Even with longer focal lengths, the high-performance Distagon optical design enables consistently good correction all the way to the corners of the image and very low field curvature.
とあるのはなんとも言えない気分です。ともかくレンズの近接性能を最大限に生かすためにかなり寄って撮ってみました。具体的な撮影距離は覚えていませんがだいたい0.2 mくらい、つまり焦点距離が同じためよく比較対象にされているDistagon 2/25では(少なくとも中間リングなどを使わずにレンズ単体では)達成不可能な撮影距離です。

_DSC4955

この例では絞りはF8.0とF2.8から3段も絞り込んでいるのですが、このレンズなんとフローティングなしの全群繰り出しなのが災いして、寄ったときは周辺がとてもスゴい描写になってしまいます。中央から隅々までよく見てみれば分かりますが、流れがないのは画面の中心のごく一部の領域のみで、周辺部は容赦なく流れたような描写になってしまいます。画面中心は良いのですが、ちょっとでもズレるとかなり派手に流れる描写です。おそらくF22まで絞ってもAPS-Cで写る範囲を超えた外側においては流れたような写りになることが予想されます。以前デジカメwatchでD700と組み合わされたとき、フローティング非搭載なので寄れば周辺が悪くなるはずだという推察がありましたが、このように目に見えて悪くなることが観察されました。

この寄ったときの周辺部の描写についてはZEISSでもネタ(?)にしていてPDFの7ページ目の右下では近接時 (0.25 m) に大きな差が出ることを同じDistagonの25 mmであるDistagon 2/25と対比されています。チャート撮影は特定条件下での特性が顕著に現れる場合があるため、実際の画像の状態とかけ離れてしまうこともあります。しかし今回のDistagon 2,8/25を近接撮影で使用する際に見られる周辺像の特性に関しては、チャートにおける像の特性が実際に撮影される像の状態をよく表していると言えそうです。

0 件のコメント: