いずれもちょっとした興味でテストした程度で、有意義な手法を真面目に考えていませんでした。しかしこの3つのレビューを基本に、今後のペンタックス67レンズの描写を見ていく方法を定めましたので、ここにまとめておきます。すでにこれまでの記事で個々に説明している部分もありますが、改めて条件設定の理由などを含めすべて説明しなおします。
一連のレンズは67用でボディはD810Aですが、当然ながらレンズの像そのものはD810Aのセンサーよりもさらに広い範囲に結ばれています。通常のアダプタではこの「外側の」領域を観察できません。ここで以前に紹介したシフト可能なアダプタを使用することで通常D810Aでは使わない領域まで描写を観察します。これによりレンズをシフトして使うに際の描写特性を推し量ると同時に、撮像素子が33×44 mmで像高27.5 mm程度まで写せる645Dにつけたときの描写を推察することも可能になります。
なお、ここで説明した方法で試写したレンズは2018年3月25日現在で次のレンズです。
- smc PENTAX 67 45 mm F4
- smc PENTAX 67 55mm F4
- smc PENTAX 67 ZOOM 55-100 mm F4.5
- smc PENTAX 67 ZOOM 90-180 mm F5.6
- smc PENTAX 67 100mm F4 Macro
- smc PENTAX 67 135mm F4 Macro
- smc PENTAX 67 120mm F3.5 soft
- SUPER-TAKUMAR 6X7 105mm F2.4
- SUPER-TAKUMAR 6X7 150mm F2.8
試写の際のシフトの方向は、テストを簡便化するために1方向にのみ限っています。理想的にはレンズは上下左右に関係なく像高に対して均一とはいえ、実際には目に見える差を生じることもあるため複数方向で検証すべきです。しかし可能な組み合わせをすべて検証していると撮影枚数が膨大な量になってしまい、趣味の一環として片手間で行える範囲を超えてしまいます。ここでは描写が回転対称であるという前提のもと、画面の右側がレンズの光軸側に来るよう17 mmだけ水平方向にシフトします。このときD810Aの撮像素子は24×36 mmなので、画面中央右端がシフト量17 mmから撮像素子の水平長さの半分18 mmを引いて-1 mmです。画面の中央はシフト量がそのまま像高で約17 mmとなり、画面の上下で中央の左端がシフト量+撮像素子の水平長さの半分で像高約35 mmになります。
シフトすることで観察する場所が次のようになります。
枠が67で撮影したときの画面で、緑で塗った場所が一連の試写で見られる領域です。理想的には右側や上下方向のシフトも試すべきですが、簡便化のため左側のみチェックします。参考までに、シフトせずにD810Aに67レンズをつけた場合は次の図のようになります。枠が本来レンズが想定している写る範囲で、これに対して緑の部分が写ります。
また33×44 mmの撮像素子の場合、たとえば645D/Zにペンタックス純正のアダプタで装着した場合ですが、本来レンズが想定している写る範囲の枠に対して、次の青で塗られた場所が写ります。
なお撮影条件から画面の四隅に画面中央と同じ距離の物体を配することが困難です。特に望遠レンズでは顕著になるでしょう。このため、基本的には画面の上下で言うと中央部分のみでレンズの描写を見ていきます。最初の画像で言うと水平方向に入っている灰色の線に沿った箇所です。
この最初の画像のようにシフトの方向を左のみの1方向に限っていることなどから、検証の限界がいくつかあります。具体的には
- シフトは1方向だけなので左右(また上下)に差があるかどうか確かめられない
- 各レンズ1本のみのテストなので別シリアルが同じような描写になるか分からない
- いずれもレンズの遠方での描写を確かめるもので近距離の描写は分からない
- 後玉が大きな一部のレンズで生じるアダプタのフレアカッターによるケラレ
- アダプタの精度に起因する狂い
- 少なくとも逆向きにシフトして回転対称性を推し量る
- 最低でも5本、理想的には20本以上で平均と分散を観察する
- 遠距離から撮影倍率を変えて、それぞれで描写を見てみる
- フレアカッターをどうにかして外し、ケラレが生じない条件にする
- 複数の像高でシフト量と方向を変えたときの平均と分散を観察する
本項で述べる手法を用いて見ていくレンズは55/4, 100/4マクロそれに初期型105/2.4に留まらず、手持ちの他のペンタックス67レンズを含みます。レンズによって開放F値が異なるので実際に使った絞りは各ページに記載していますが、基本は開放とF4.0, F5.6, F8.0, F11で撮影しています。たとえばF2.8ならF2.8, F4.0, F5.6, F8.0, F11で、F4.5のレンズならF4.5, F5.6, F8.0それにF11です。いずれもレンズ側で設定しているため、実際のF値が誤差を伴い、比較したときに明るさに出ている場合があります。差は概ね1/6段以下のようなので特別な補正は行いません。ただしボディ側で露出関連の設定を1段刻みとしているため開放F値が4.5のレンズでは開放でのみ半段暗く写っています。また先に述べた通り、アダプタのフレアカッターによるケラレが一部のレンズで発生します。これも補正は行いません。いずれも実際の撮影に対する資料とするためです。
ピントは画面中心で無限遠をやや越えるあたりから、厳密ではなく大ざっぱに少しずつ手前に動かしています。このため特にピントリングの回転角が無限遠付近で比較的狭くなっているマクロレンズでは、ピークを挟んだ奥と手前しか存在しないものもあります。これもレビュー(試写)があくまで撮影に向けての資料であり、ピント回転角が狭いという情報も重要であるためです。
絞りとピントの両方が変わりますが、まずピントを決めてからそれぞれの絞り値で1セット撮影し、ピントをやや手前に移してそれぞれの絞り値でさらに1セット撮影することを繰り返しています。このため各ピント位置での絞りを変えた時の特性がわかり、これはフォーカスシフトのチェックにとても有効です。
切り出しはドットバイドットの900×600で行い、割と大ざっぱに画面の4箇所で行っています。先の緑で塗られた箇所だけを写して、さらにその中で下の図の丸印をつけた4箇所です。
まず×印をつけた像高0 mmである光軸付近、その左の像高約12~15 mmでちょうどD810Aシフトなしにした場合の水平方向で画面やや端のあたり、像高約18~22 mmでD810Aシフトなしにした場合で画面端~645Dで画面の端のあたり、それに機材の組み合わせで水平方向のみで検証可能な最大値である像高~35 mmです。切り抜きの場所はレンズ毎に少しずつ異なりますが、同じレンズでは切り抜きの場所は変えていません。できる限り切り抜き前の元画像を合わせて提示しますので、これで具体的にどの部分を切り抜いたかはそちらで確認してください。
手法そのものの再現性を含め、レンズを評価するにはデータが大きく不足していますが、一連の投稿はあくまで自身が持つ機材で(只見線の)撮影時に思い出すべきレンズの特性をまとめたため、これを公表するものです。
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