2018年3月26日月曜日

smc PENTAX 67 ZOOM 55-100 mm F4.5 レビュー(遠方の描写のみ)

ペンタックス67にはズームが2本ほどあるので試しに使ってみることにしました。まず1本目は55-100でF4.5です。もう一つのズームである90-180/5.6の記事はこちらです。テスト画像を撮る手順は他の67レンズと共通で、焦点距離毎に独立して撮影しています。このため焦点距離が異なるとピントの刻み方も違っていて、たとえば55 mmの上から3段目と100 mmの上から3段目はピントの位置が異なります。このためズーム操作をしたときにピントがどのように動くかは検証できません。通常の撮影では焦点距離を決めてからピントを決めるので、このようにしています。

絞り値は左からF4.5, 5.6, 8.0それに11です。シャッター速度の刻みを1段に設定しているためF4.5は半段高速側になり他の絞り値より暗く写っています。アダプターに起因するケラレではありません。今回は広角端55 mmと刻印のある75 mmを挟んだ前後にあたる70 mm程度と80 mm程度、それに望遠端の100 mmの4つの異なる焦点距離を試しました。普段はまとめを一番下に掲載していますが、見づらくなるのでまとめを先に掲載してからそれぞれの焦点距離での中央~端を見ていきます。

1, まとめ
望遠側ではF11まで絞らないと条件によって不満が出そうですが、逆にそれより広角側ではF8.0まで絞れば645Dで使ってもまず不満は出ないレベルの描写になります。広角側では良く写る単焦点の55/4を相手にかなり健闘していて、ズーム中間でも開放はともかくF8.0まで絞るのであれば645Dで十分に使えるはずです。隅々までガチガチの硬い描写を求めないのであればもう1段ほど絞りを開けても良さそうです。
実用に際しての懸念は重さで1,210 gもあります(交換レンズ/広角ズームレンズ[67II用])が、それでも55/4の725 g(交換レンズ/広角レンズ[67II用])と100/4マクロの600 g(交換レンズ/マクロレンズ[67II用])よりも軽く、焦点距離75 mmもカバーしているので一概に重いとは言えません。それでも気軽に持ち運べるレンズではありません。重すぎです。

それぞれの焦点距離の描写は以下に載せてあります。



2-1, 55 mmの中央

先に書いたとおり一番左のF4.5は半段ほど暗くなっています。この開放では上から8段目がピークに見えます。ピント面前後の様子は55/4によく似ており、ピント面の写り方も55/4と比べて特に劣っていることは無く、ズームレンズとは思えないほどよくまとまった描写になっています。絞っていくとF5.6では上から9段目が8段目に追いつくか追い越した感じの描写、F8.0ではさらに10段目が許容範囲に入り、F11では7~11段目あたりが良好な描写になります。この中央部の様子は55/4に酷似しています。
55Z1center

2-2, 55 mmのやや左

ここでも開放ではまとまりの良さがあるのは上から8段目で、それにかなり近いのが7段目、少し後れを取って9段目というところでしょうか。順番やそれぞれの差は中央付近とほとんど同じですが、全体的に少し甘い感じになっています。只見線撮影に使用することを考えると、すでにF4.5をできたら避けたいと感じる描写です。単焦点である55/4のほうは厳密に条件が同じではありませんが、似た像高で開放のF4.0しっかり写っています。ズームはF5.6に絞ると甘い感じが解消して単焦点に勝るとも劣らず、よい描写になります。それでもよく見ると倍率色収差に起因しているように見える色ずれはズームの方が少し多く、単焦点の余裕が垣間見られます。もっともズームがダメということではなくて単焦点55/4が特に優れた描写をすると捉えるのが正しいところだと思います。このF5.6におけるピークは開放F4.5と同じく上から8段目で、僅差で7段目、少し遅れて9段目と続きます。さらに絞ってF8.0のときもピークは8段目で9段目がかなり追い上げて7段目と同じか色滲みで僅かに7段目より良好な印象を受けます。F11では上から8~10段目がピークで、7段目は少し力強さに欠けますがそれでもしっかり写っています。F5.6から十分に使えます。
55Z1near

2-3, 55 mmのさらに左

このズームではあまりにも巨大な前玉が功を奏しているのか、周辺光量不足が目立ちません。一番左は少し暗いですが、おそらくF4.0ではなくF4.5のために半段ほど暗く写っているだけです。肝心の写りですが開放では6~8段目あたりがピーク?よくわかりません。半段絞ったF5.6では全体的に写りが改善しますがまだイマイチでピークは同じく6~8段目に見えます。さらに絞ってF8.0にするとようやく像のコントラストがしっかり出てきて、ピークは相変わらず6~8段目です。最後にF11では像そのものはほとんど変わりなく、許容範囲が少し広がって5~9段目のあたりです。もちろん単焦点の55/4のほうがよく写っていますが、横並びで直接比較しない限りは大きな差違を見いだすことは難しいと思います。そのくらいこのズームはよく写っています。
55Z1mid

2-4, 55 mmの左端

ここまで来ると開放とF5.6ではどこがピークか見定めるのが難しくなります。F8.0では2段目あるいは4~8段目あたりがピークに見えます。またF11では5~9段目あたりが良さそうです。
55Z1far

2-5, 55 mmのまとめ
画面の端の方でもピントのピークはほとんど動かず、絞ったときのピントの動き方は55/4とよく似ています。2-3の項に載せた画像をみる限り645Dで使うならF8.0まで絞りたいところです。また画面の端にいくほど55/4との差が広がっていく印象です。この55/4はかなりよく写るので、機材に制限がない場合はこのズームをあえて55 mm側で使う理由はなさそうです。このズームがダメというわけではなくて、55/4の単焦点が良すぎます。

3-1, 70 mmの中央

これもまた一番左の絞り開放F4.5の列は半段ほど暗くなっています。開放では上から6段目が最良で5段目が僅かに劣るようです。7段目は手前の木の枝にピントが来ていて奥の建物は若干ですがピントが外れている状態で、ただ色滲みはむしろ少なくなっています。絞りをちょっと絞ってF5.6にするとこの7段目が大きく躍進して5段目を追い越して6段目とほとんど同じ描写になります。条件によってはこの7段目の方がスッキリした描写と感じるかもしれません。この中央部の特性は55 mmのときとほとんど同じです。さらに絞ってF8.0では7段目がピークでその前後にあたる6~8段目が良好となり、最後にF11では6~9段目でほとんど差がない良好な描写です。
70Z1center

3-2, 70 mmでやや左

絞り開放では早くも全体的に甘い感じが出ていますが、開放同士で比べると5~7段目あたりが良くて僅差で6段目がピークに見えます。55 mmのときと同じくF5.6まで絞ることで甘さがほとんど消えて、6段目をピークに5~7段目あたりでメリハリのある描写になります。このくらい写れば十分に実用になります。さらに絞ってF8.0では僅かながらコントラストが改善され、6~7段目がピークのようです。F11では5~8段目でほとんど差が無くいずれも良好な描写になり、4段目も十分に使える写りです。
70Z1near

3-3, 70 mmでさらに左
絞り開放ではだいぶ甘めの描写ですが、比べると2~6段目あたりが良さそうです。少し絞ってF5.6でも甘い感じはそのままで、4~5段目あたりが比較的よくまとまっているほうです。さらに1段絞ったF8.0でようやく実用的な像になり、5~6段目が描写のピークになっています。これなら文句なく使えます。一番右の列のF11では3~8段目で実用的な写りになります。
70Z1mid

3-4, 70 mmで左端
絞り開放ではだいぶ甘いですが先と同じく2~6段目が比較的良くて、次のF5.6では4~6段目が良くなっています。さらにF8.0とF11では4~7段目あたりが良く写っています。
70Z1far

3-5, 70 mmのまとめ
70 mmでは55 mmとほとんど同じような描写の特性を持っています。F8.0まで絞っていけば実用に十分な像になり、ピントのピークの位置が中心部と周辺部でほとんど代わりがないので645Dでも使いやすいレンズになりそうです。使いやすいと言ってもあくまでピント面の変動が少ないというだけで、大きさと重さを考えるとおおよそ使いやすいレンズではありません。普通に持ち歩くだけで鞭打ちになりそうな重さです。

4-1, 80 mmの中央
絞り開放では3~4段目が良さそうで、よく見ると3段目の方が少し良さそうです。1段絞ったときに4段目が大きく改善して3段目とほとんど同じ描写になるのはこれまでの55 mmと70 mmのときとほとんど同じ特性です。奥の細かい部分をつぶさに観察してみると、若干ではありますが3段目の方が細部の描写で勝っているようです。ただしこの3段目は色のにじみが目立つため、ぱっと見たところでは色の滲みがより少ない4段目の方が好印象を持ちそうに思います。さらに絞ってF8.0のときは3段目の色滲みも低減されて4段目とかなり良い勝負で、また5段目がかなり追い上げてきます。最も右のF11では3~6段目までほとんど差がなくとても良い描写になります。
80Z1center

4-2, 80 mmのやや左
この領域は少し甘いですが55 mmや70 mmの「やや左」に比べるとまとまりのある描写に思えます。もちろんF5.6~に比べて甘いのですが、思い切りボヤボヤというよりは軽く力がスッと抜けてるくらいで悪くない印象です。同じ被写体だから像倍率が上がって相対的に被写体がしっかり写っているだけのことかもしれません。開放のピークは上から3段目でF5.6でも像は改善しますがピークは同じく3段目です。さらに絞り込んだF8.0では4段目が3段目に追いついてF11ではこの3~4段目をピークに2段目と5段目も十分に許容範囲に入る写りです。
80Z1near

4-3, 80 mmのさらに左側
ここでも55 mmや70 mmの同じ像高に比べてより良い写りをしています。甘いことは甘いのですが、像が変に放射方向へ流れたりはしていません。ただし開放では2~3段目がピークで、中心部に比べるとほんの僅かですが手前に移動してきているようです。少し絞ったF5.6とF8.0は全体的に描写がスッキリしてきて、ここでも開放と同じく2~3段目がピークです。さらに絞ったF11ではF8.0から大きく改善はせず、ピークは2~4段目です。
80Z1mid

4-4, 80 mmの一番左端
ここも少し甘いとは言え~70 mmに比べて開放から比較的まとまりのある好印象な像です。開放とF5.6のピークは3段目ではなく2段目です。4-3に比べてさらにピント位置が移動しているように思われます。しかしF8.0に絞ると3段目が大きく改善して2段目に迫る描写となり、十分に使える写りになります。もっとも右の列のF11では2~4段目で描写のピークになっています。
80Z1far

4-5, 80 mmのまとめ
周辺部の描写が開放からまとまりがあります。645Dで使う場合でも躊躇なくF5.6を選択することも可能に思えます。ピントのピークについても画面全体で大きく動くことがないので、絞り開放にして中央でしっかりピントを合わせればそれで概ね満足いく描写が得られそうです。この80 mm域では特にライブビューが搭載されていない645Dでも、レンズの持っているものを引き出しやすいように思いました。

5-1, 100 mmの中央
望遠端になると中央付近でもかなり厳しい写りになります。特に絞り開放ではピークそのものは上から4段目なのですが余裕がなさそうな写りに見えます。次のF5.6ではこれまでの絞り開放のような描写になり、さらに1段絞ったF8.0では描写が改善していずれもピークは変わらず4段目です。またF11では上から3~5段目で良好な描写になります。
100Z1center

5-2, 100 mmのやや左
ここでも中央と同じくF4.5ではかなり苦しそうな写りをします。ピークは3か4で、どっちもイマイチなのでどちらが良いか判断に迷います。絞ったF5.6~F11でも3~4段目がよくて、比べると特にF8.0とF11では4段目の方が好印象です。
100Z1near

5-3, 100 mmのさらに左
開放は相変わらずですが、F5.6~F8.0のときも含めてピークは少し動いて上から3段目でしょうか。絞り込んでF11にすれば上から2~4段目で不満の無い描写になります。
100Z1mid

5-4, 100 mmの左端
開放とF5.6はだいぶ辛そうです。上から3段目がピークで、F8.0だと2段目も許容範囲に思えます。F11だと2~3段目で良好な描写で、4段目も許容範囲に入っているようです。
100Z1far

5-5, 100 mmまとめ
この100 mmでは開放F4.5ではなく事実上開放F5.6というような扱いをしたほうが良さそうです。この55-100は2群ズームで、手動で操作できる絞りとは別に広角側で勝手に少しだけ絞り込まれた状態になります。このため設定可能な絞りではF4.5~ですが、このF4.5ですでにほんの少しだけ絞り込まれた状態になっています。望遠端だけF4.5で少し描写が苦しそうなのは、この絞りのために~80 mmではF4.5でも少し余力がある描写になっているのかもしれません。もう1つのズーム90-180の広角端を使う方が良さそうです。

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