2017年1月22日日曜日

ペンタックス67レンズをティルトシフト可能なレンズとしてD810Aで使う

・ティルトシフトレンズとは
簡単に言うと光軸をあえてずらして、ピント面のコントロールするのがティルトで、イメージサークルの中心部でなく周辺部を使って遠近感などをコントロールするのがシフトです。
概略はケンコープロフェッショナルイメージングのホースマンのページに掲載されています。

ティルトはピント面が光軸に直交するということを逆手に取り、光軸をフイルム面(センサー面)と直交させないようにします。これによりピント面とカメラのフイルム面(センサー面)の並行関係を崩します。フイルム面(センサー面)と被写体の配置、それに傾ける向きの方向の関係によって、ピントが合う範囲は通常(ティルトなし)に比べて深くなる場合と逆に浅くなる場合があります。深度を深くする例はアクセサリーなどの撮影です。絞りを絞り込むことでも被写界深度を深くできますが、レンズによって最大絞り値が決まっていて(F22やF32など)、これがしばしば不十分であること、また絞り込みすぎると回折が発生(2017年現在に発売されているレンズ交換式のデジタルカメラだと、概ねF11からF16まで絞るとドットバイドット表示において明確なシャープネス低下が見られる)してしまうことから、ティルトは有効です。また深度を浅くする例はミニチュア撮影を光学的に行う場合で、大口径レンズではボケが得られない平面の被写体においてもピント面をその平面から傾けることで被写体の一部にしかピントが合わないような画像が得られます。

シフトはレンズの持つイメージサークルがフイルム(センサー)よりも広いことを利用して、イメージサークルの端の方を使います。実際に起きていることは、レンズの焦点距離に対して一回り広角側のレンズで撮影し、画面の上半分や右半分をトリミングして使うことです。典型的な使い方の一つは、高層建築などを撮影するときに通常(シフトなし)では上すぼまりになってしまう場面で、シフさせることで上すぼまりにならないように撮影することです。他にも強い反射をする被写体を正面から撮影しなければならないとき、シフトさせることで撮影者を被写体の反射から消すために使えます。さらに応用として、広角レンズにおける画面周辺部で引っ張られたように写る効果(パースペクティブの一種)を利用し、足を長く見せることも可能です。さらにシフトなし、ある方向へシフト、逆の方向へシフトした3枚をステッチするような撮影にも使えます。

・なぜペンタックス67レンズなのか
ティルトシフトを実現するアダプタは複数あります。KIPONからは中判レンズ→一眼レフや一眼レフレンズ→ミラーレスボディなど合計30種類で、海外でもAdoramaなどで取り扱いがあります。ただしニコンFに適合するのはハッセルのみで、ペンタックス645や67に対応するアダプタはありません。現在使用中のボディにD810Aが含まれているので、もしニコンFマウントのボディで使えるティルトシフト可能なアダプタがあれば理想的です。どうしてもなければEFマウントのEOSボディでも構わないのですが、できればニコンFマウントのボディに対応が一番良い。シフトのみならペンタックス645と67いずれもニコンFに対応するのですが、やっぱりティルトは魅力です。ティルトのみで検索すると、ニコンFに対応してるのはハッセルのみです。さらにググりまくっていると、MiREXというアダプタメーカーが引っかかりました。このサイトはドイツ語ですが、英語と似たようなものなのでゴリゴリ読んでいくと、ティルトシフトアダプタはハッセル、マミヤ645それにペンタックス645向けにしかないように見えます。そして残念ながらこのペンタ645レンズに対応するアダプタはM42、キヤノンEOS、ソニーα、それにペンタKにしか対応してなく、ニコンFには対応していません(しかしペンタ67レンズなら大丈夫という記載があります)。そこで改めてMiREXの価格一覧表を見ると、ペンタックス67→ニコンFのティルトシフトアダプタが存在します。問い合わせてみると無限もしっかり出るとのことでしたので本格的に導入を検討しました。

・価格の検討
アダプタの価格は499 EURに送料と消費税相当額(関税ではない)で、だいたい7万円ほどです。また67のレンズはものによりますが、たとえば45/4であれば新品でも投げ売り価格で39,800円くらいです。今のところは純正フード(PH-SB82)がリコーイメージングのオンラインストアで普通に買える(販売価格:¥4,222(税込)・ポイント422)のですが、これを合わせても12万円程度です。他のティルトシフトできる45 mmの候補はキヤノン(メーカー商品情報ページUSA版、それにBHphoto販売ページ)とニコン(メーカー商品情報ページUSA版BHphoto販売ページ)からそれぞれ出ていることに加え、ちょっと前まで(ナショナルフォトでは2016年5月20日付けで生産終了のお知らせが出てる)はシュナイダーが50 mmのF2.8(※PDF直リンク)がありました。下の画像はメーカーのページのスクリーンショットです。






しかしいずれも値段が高く、ヨドバシの価格がキヤノンは参考が¥189,000の価格が¥145,960(税込)で、ニコンは参考が¥340,200の価格が¥247,450(税込)で、ナショナルフォトによれば、シュナイダーは参考価格が¥831,600(税込)でした。67のレンズは絞りで1段の違いがある(F4.0に対して他はF2.8)のと、周辺部での光量や画質はもしかしたら劣るかもしれませんが、それでも最も安いキヤノンのTS-E 45/2.8より安い67レンズ+アダプタは魅力的です。




さらにティルトシフトレンズを増やしたい場合に価格の差は広がります。たとえば67の90/2.8を加えると、キヤノンのTS-E 90/2.8(メーカー商品ページそのUSA版BHphotoの販売ページ)またはニコンのPC-E 85/2.8(メーカー商品ページそのUSA版BHphotoの販売ページ)加えた場合に比べてトータルの価格がかなり抑えられます。




具体的にはヨドバシでTS-Eの90が参考¥199,800→販売価格¥165,130(税込)で、同じくヨドバシでPC-Eの85が参考¥340,200→販売価格¥271,830(税込)です。販売終了ですが、シュナイダーの90/4.5は小売り希望価格788,400円でした。最近では67 90/2.8を探すのに一苦労しますが、それでも5万円はしません。67レンズはアダプタ1枚で645Dにも使えることから導入を決めました。





・操作性
フォーカシングはどのレンズもマニュアルなので、同等と言って構わないでしょう。絞りについては、ニコンは自動絞りまたは鏡筒中央にある絞りリングを使ったプリセット絞り、キヤノンは自動絞りである一方、67が完全にマニュアルですので操作性にやや劣ります。ただし実際に使うとき、個人的にはライブビューを使います。ファインダーで画質に問題がないか、ピント面の制御がイメージ通りかを確かめるよりもライブビューを使ったほうが手っ取り早いためです。またライブビューは露出の確認も兼ねます。これはカメラの内臓露出計はティルトシフト時にしばしば不正確になってしまうためですが、ライブビューを使って丁寧に撮る場合はマニュアル絞りが大きな欠点にはなりません。

ティルトシフトの量に関しては、キヤノンがシフト:±11 mmでティルト:±8度(45/2.8, 90/2.8)でニコンがシフト:±11.5 mmでティルト:±8.5度(45/2.8, 85/2.8)ですが、MiREXのアダプタはシフト:±17 mmでティルト:+10度(ボディにより制限あり・D810Aではペンタ部と干渉する方向において実測+8度まで)です。レボルビングはキヤノンとニコンが共に±90度で、MiREXのアダプタは360度ですが、前者はティルトがマイナス方向に行えるので同等です。あおり(ティルトやシフト)操作はキヤノンとニコンがつまみを回転させる方式で、正確な操作が可能です。MiREXのアダプタはシフトが1 mm段階でのロック(ボタンを押しながらスライドさせて、離して固定させる)方式で、ティルトがネジ止め(つまみを弛めてティルト量を調整して、角度がきまったらつまみを締める)方式です。シフトはともかく、ティルトは角度の設定に苦労します。ネジのテンションを調整することも可能ですが、操作しやすいように弛めすぎると今度は締めても完全に固定されず自重でズレてしまうことがあります。また、キヤノンとニコンのレンズはティルトとシフトの軸を直交と並行が選べますので、このあたりはキヤノンやニコンのレンズが優れています。一方で最大のシフト量やティルト角度はMiREXアダプタのほうが有利であり、特にレンズのイメージサークルを心配せずに安心して大胆にシフトできる点はペンタックス67レンズにMiREXアダプタを組み合わせる動機の一つになり得るでしょう。もう一つMiREXの利点として挙げられるのは、三脚座の存在です。シュナイダーのレンズも三脚座があるのですが、これはシフト操作するときにとても役に立ちます。ボディの位置を固定してシフトさせてもステッチすることは可能なのですが、レンズ側に三脚座があると直感に従ったシフト操作が可能となります。ティルトに関してはむしろボディを固定しておいてレンズをティルトさせるほうが自然なようです。このティルト操作に関してはレンズの主点により近い位置を軸に回転が行える三社が有利で、MiREXのアダプタを軸に回転させる方式ではティルトの中心がズレてしまいます。またシフトの方向が選べないので、このティルトによって生じる中心のズレを補正することもできません。ただしピントの調整によって、中心のズレをある程度ですが見かけ上補正できます。

以上から、ペンタックス67レンズとMiREXのアダプタを利用したティルトシフト環境の構築は十分に現実的であると言えます。特に価格の面でのアドバンテージは大きく、ペンタックス67レンズの多くが使える(望遠ではケラレが出て実用が難しい条件も存在)点は魅力的です。操作感を若干犠牲にしてでもペンタ67レンズ+MiREXアダプタを検討する価値は十分にあります。しかしその一方でキヤノンやニコンのレンズが持つ優れた操作性と機能性、またメーカー純正という安心感は絶大です。またニコンのPC-Eは45 mmも85 mmも近接性能が良好で、ハーフマクロとして使うことが可能であることは特筆すべき点でしょう。用途と予算に応じて複数の選択肢があることはユーザーとしてはありがたいことです。

・おまけ
ペンタックス67のレンズはフィッシュアイを除いて45/4までしかないので、28~24 mmくらいとかあと19, 17 mmのレンズはニコンまたはキヤノンのを使うのが一番です。 高いですが、これは替えが効かないし、しかもキヤノンの24, 17とニコンの19は通常のレボルビングじゃなくて、TSレボルビングと呼ばれるティルトシフトの間のレボルビングが可能で、キヤノンの従来型に見られる並行 or 直交ではなく連続的に変化させることが可能なものなので、使い勝手はとても良いです。




キヤノンのTS-Eレンズ群のカタログはここからダウンロード出来ます古いリンクも発見(こっちの取説は表紙のフォントが違う) 

2018年5月22日 追記:
Fotodioxが類似製品を出しました。
https://fotodioxpro.com/products/tltrokr-p67-nikf


主な違いはシフト量の最大値でこのMirexが17 mmに対してFotodioxは20 mmまでシフトできます。<追記>できません。左右それぞれ10 mmずつで合計20 mmなのでMirexの「左右それぞれ17 mmで合計34 mm」のほうが大きなシフト量に対応します。<追記ここまで>またおそらく外爪のレンズ(とても古い望遠レンズに採用)にも対応しています。ただ望遠ではケラレが多くなるのでティルトシフトは現実的ではなさそうです。
サイトを見た感じだとこのFotodioxはMirexと同様シフトはボタンを押している間に行いボタンを離すとラッチで固定、ティルトはネジを緩めて行いネジを締めると摺動抵抗が増して角度を保持するような仕組みと思われます。本当は微調整が容易なダイヤル式が理想ですがスペースの関係で難しそうです。その他の内面反射対策、フレアカッターや作り込み、耐久性についてFotodioxがどの程度Mirexに肉薄しているか気になります。

0 件のコメント: