先日某所に出かけた時に思ったことです。スタジアムのスタンド(観客席)でストロボを焚いて何になるのか?
世界陸上でも同じような光景を目の当たりにします。
ストロボにはガイドナンバー(GN)という性能指標が与えられます。ガイドナンバーとはおおざっぱに言えばストロボの最大光量です。GNは感度ISO100のときにレンズの口径と被写体までの距離の積の値です。
実用上は「GN56のストロボを使ってフィルムの感度100で被写体までの距離が10mであるときに、この被写体を適正露出で撮影するためにはレンズの口径をF5.6にする」ことになります。式にすれば
ガイドナンバーGN×(ISO感度÷ISO100)÷(被写体までの距離)=レンズの絞り値
or
ガイドナンバーGN×(ISO感度÷ISO100)÷(レンズの絞り値)=被写体までの距離
というわけです。ということはGN一定(つまりあるストロボを使うという条件)のとき
・感度が2倍になる。
・撮影距離が0.5倍になる。
・レンズの口径が√2(≒1.4)倍になる(つまり絞り値は1/√2≒0.7倍になる)。
これら3つの条件は全て同一になります(口径について“n倍になる”とは“n倍だけ大口径となり絞り値は(1/n)倍だけ小さくなる”ことを指す)。
さて問題はこのGNの値であり、だいたいの小さな一眼レフカメラは15程度になります。感度を800にしたと仮定します。そして多く使われているレンズは頑張っても開放でF2.8程度の絞りですから被写体までの距離は
GN15×(ISO800÷100)÷F2.8=40m
ということでおよそ40mが限界値なのです。ここで感度をISO3200にすれば限界は160mとなります。しかしよく考えてみてください。そもそもスタジアムの照明は非常に明るいことが多いので、ストロボなんて焚かなくても十分に速いシャッター速度を確保することが出来ます。
以上が一眼レフでの話。次にコンデジについて考えると、コンデジのGNは一眼レフの小型内蔵ストロボにもましてさらに貧弱です。一眼レフですら意味がないようなストロボなのに、さらに貧弱なコンデジのストロボが役に立つことって果たしてあるのでしょうか。もちろんありません。
ちなみに富士フイルム FinePix F60fdでは屋外の広角、感度自動の設定とするとき約4.4mしかフラッシュ光が届きません(仮にこのときISO400ならば、マニュアルでISO1600相当としても17.6mがいいところ)。やはり無意味なのです。
これまでの結論―スタジアムでストロボを焚くことは無意味―が嘘だと思うなら、一度ストロボを焚かないで撮影してみると良いでしょう。
かなり多くの場合においてはストロボを焚いても焚かなくても結果は同じなのです。相当にGNが大きな(例えばGN50を超えるような)ストロボ―ここまで明るいストロボを使えば迷惑行為なので退場させられるかもしれません―を使用すれば例外ですが。
結局のところストロボは焚かなくても撮影結果が同じなので、ストロボは焚くべきでありません。
理由の一つ目として、選手は競技に集中すべきだからです。あのストロボは気が散ります。慣れている選手達ではありますが、しかしあるのとないのでは、ストロボ光はないに越したことはありません。
もう一つ理由があります。それは電池の消耗。コンデジの電池はお世辞にも容量が大きいとは言えません。この小さな容量の電池を長持ちさせるためにストロボは切るべきなのです。
フラッシュ光やストロボ光の自粛―言い換えるならば無意味な発光の撲滅―が早く広まることを期待します。
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