引き続きMTFについて。
光学系では明部と暗部の差が「contrast」(→明暗差)と呼ばれます。より一般的な定義に基づけば正弦波の明暗差は「modulation」(→直訳で「変調」だとしっくりこないけど適切な訳がないので「変調」とする)と呼ばれます。
なぜしっくり来ないかというと、電気系で「変調」と言えば正弦波(搬送波)に信号(被変調波)を乗せることを指します。そして変調した結果、搬送波は形状が変わります。たとえばAMなら振幅が時間変化していて、その包絡線が乗せられてる信号=被変調波です。FMなら周波数が時間変化していて、その周波数とキャリア周波数の差違が被変調波です。いずれ「変調」というと綺麗な正弦波を基準にして、振幅なり周波数なり位相がズレることと関連します。光学においては「変調された後の波」が「正弦波の明暗差」ということですが、正弦波で周波数も明暗差(振幅)も一定だと「変調されてない波」、電気系で言うところの搬送波と区別がつかないためです。
このようにmodulationという単語の定義はやや疑問が残りますが、ひとまず本文に戻ります。
被写体側の変調と像側の変調の比率をとったものが「modulation transfer」(→「変調伝達」)ということになっていますが、これは平たく言うと被写体側と像側のコントラストの伝達(コントラストの差)です。これが空間周波数に対して「関数」であることから、計測結果はmodulation transfer function (MTF)と呼ばれます。この数字は0と1の間になります(完璧に伝達されてれば1でまったく伝達されずに明暗差が一切現れなかったら0で、あとはその中間値)
少し話が変わりますが、写真家は明暗差をしばしばどのくらいの絞り段数に相当するか、それは我々の目が対数のスケールで関知するものと表現すると理に適っている、による表現になれています。この絞り段数による表現で50%のMTFはどのようなことになるでしょうか。たとえば6段相当の絵(1:64の明暗比)は3段相当の絵(1:8の明暗比)になるのか、それとも1:32の明暗比(5段相当)になるのでしょうか。実は両方とも間違っていて、6段相当1:64を50%のMTFに突っ込むと1.5段相当(1:2.9)になりますが、これはコントラストの定義によるものです。
contrast = (Max - Min) / (Max + Min)
次回は実際に数値を代入していきます。
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