1. 概要
無限遠付近での様子を主に観察していますが、絞り開放から良く写ります。しっかりライブビューでピントを合わせる条件では、18 mmも21 mmも開放から必要十分な良い描写を呈し、それぞれ2段ほど絞り込むとさらに良好な描写を示します。逆光の描写はどちらも似たように弱くて、画面内あるいはギリギリ画面外にあたりに太陽を入れると綺麗に赤いゴーストが出ます。フード(レンズシェード)は同じもので、絶妙に防ぎきれない角度がある点も同じで、この点でも兄弟のようです。
2. Distagon 21に届かない部分
この18 mmはF3.5で最短撮影距離も0.3 mと、21 mmのF2.8と0.22 mには及びません。ついでにプライスタグも僅かに及びませんが、これは買う側にはむしろ良いことです。また周辺部におけるコントラスト差が大きな箇所への色づき(推定では倍率色収差が主要素)の量も18 mmがやや大きく、周辺光量落ちもおそらく18 mmがやや多く、このため優劣で言えば18 mmがやや劣ることは否めません。ただし値段と大きさの差は十分に正当化するものと考えられます。特に全長は大きな差があり、条件によっては21 mmが長くて取り扱いに苦慮する一方で18 mmを好む場面も少なくないでしょう。
3. ボケについて
明白な違いが見られるのが点光源のボケで、これは撮影距離いろいろ変えて見てみました。F6.7くらいまでは特にピント面の手前側において、点光源ボケの光量分布が不均一でかなり目立ちます。特に開放では綺麗に輪っかができてしまい、後ろ側はここまで極端ではないものの、それでもピント面と光源の距離の組み合わせによって目障りになる場合があります。これをF6.7くらいまで絞り込むと光量分布の不均一さは解消されますが、21 mmのほうは絞り開放から点光源ボケの光量分布がより均一です。
4. 絞り込むときのピントの移動
もう一つ、これは気づく人は気づくような細かな違いですが、絞り込んだときのピントのピークの移動がこの18 mmでは見られます。ちょうど以前に行った67レンズをティルトシフト可能なアダプタであれこれ見てみる中で、55 mmのF4.0や100 mmのF4.0などで「絞ったときのピークは、ピントを少し手前に動かした位置」という現象と同様で、21 mmのほうはこのようなことが実用上まったく見られませんでした。この18 mmは開放から2段ほど絞ったときのピントピーク位置がやや手前に動きます。特にF5.6前後で撮影する際は、絞り込んだ状態で厳密なピント合わせを行うのが好ましいでしょう。
5. まとめると
まとめると、このCarl Zeiss Distagon 3,5/18は、21 mmと似たような性格で3600万画素には十分対応できるしっかりしたレンズです。最大限の性能を引き出すことを考えると21 mmに対してユーザーがカバーすべき箇所が見られます。これは言い換えると21 mmとの違いに集約され、次のように言い換えられます。21 mmは点光源のボケが開放から均一に分布しててピントは絞ってもピントが動かない一方で、18 mmは点光源のボケが特に手前で開放では少し不均一でピントは絞ると(点光源のボケの分布が均一化すると同時に)少し動きます。
6. おまけ
ところでコシナのサイトに次のようなうたい文句があります(2019年2月14日の時点ではクラシックシリーズのトップからは辿れないので「ありました」というほうが正確かもしれません)
“開放F値を3.5と大口径化しながらフィルター径はφ82に抑えられています。”説明には間違いがないのですが、少し誤解を招く表現に思えます。というのも、これはおそらくコンタックスのDistagon 18 mm F4との比較ですが、実際にこの18/4を見たことがある人は次のように疑問を抱くはずです。“抑えられてるというかむしろ大型化していないか。”この18/4ですが、実は70-86のステップアップリングを介して「フィルター径86 mm」でした。
70/86リングを装着。フィルター径はかなり大きい「86mm」でラッパ状に広がった仰々しい雰囲気となる。
前玉の保護と引き換えに長所のコンパクトさを損なう上に、正直レンズフードとしての効果もほとんど期待できません。Distagon18mmは逆光耐性に定評があり、空の色も濃く写るのでPLフィルターも基本不要。ハードな環境に持ち出さない限りこの状態で使うつもりはありません。
そのうち作例を追加できればと思います。
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